The Focal Distance

若さとはこんな淋しい春なのか

どこに書くか

文章を書くことが嫌いではない。

山田風太郎のように連日綿密な日記を残せるほどの気力はないけれど、それでも不定期に何かを書いておきたくなる程度の衝動はある。

そのとき悩ましいのが、「どこに書くか」ということ。選択肢が限られているのではなく、むしろ多い。多いために、悩ましさが生まれる。

文章といってもいろいろな種類があるが、いっときの感情をとりあえず言語化して記録しておくにはTwitterが良い手段だと思っていて、満足している。問題はもう少し長い文章、思考や行動、新たな知見などを記録しておくための場所で、これまでもいろいろと試行錯誤してきた。

最初に選んだのは今はなきはてなダイアリーで、もう10年近く前の話なので何を書いていたのかもよく覚えていない。ヨーグルトが美味しいとか、そういうレベルのことだったと思う。しばらくして公開を停止した覚えはある。

その後、現在まで不定期に(たとえ年に一度程度だとしても)それなりに長い文章を新たに公開しているのはFacebook, note, はてなブログである。これらはそれぞれ悪くない選択肢だが、Facebookは性質上、基本的にはクローズドな場所だし、noteも検索エンジン経由でアクセスされることは少ないように思う。

それはそれで、知人や友人に見てもらう文章を書く場所としては十分で、それ以外の人大勢に読んでもらうことを期待しているわけでもないが、キーワードを検索して知見を得るという流れはソーシャルネットワーク全盛の今でもよくあることで、そうやってたくさんの利益を得てきた身としては、こうして記録しておいたことが、たまたま誰かの役に立つ可能性がある方が嬉しい。それを狙って書くつもりはないけれど、そうなるのは喜ばしい、という意味である。

残りの1つ、はてなブログは割と検索でも引っかかりやすいし、満足しているのだが、私が最近文章を書くのにUlyssesという素晴らしいアプリケーションを用いていて、それと連携するのが難しい、というのが欠点である。

今ここに挙げたサービスはすべて、公開される範囲の差はあるにせよ、オンラインで文章を公開することが前提になっているが、そもそも文章を公開する必要があるのかどうかについても考えると、僕にはある、という結論になる。

僕はこうした文章を基本的には未来の自分に向けて書いている。そのとき何を考えていたのか、何をしていたのか、あるいは得た知見をまとめておき、未来の自分が時々それを読み返して思い出す、という寸法である。何もかもを覚えているわけにはいかないので。

それを考えれば別に公開する必要はない。インターネットどころか電気も存在しない昔から人は日記を書いてきたわけだし、紙に記すのが面倒くさければローカルのテキストファイルとして保存しておけば良い。それで十分足りるが、全く他人に見られない前提で文章を書くと、将来の自分にすら論理を追えず何を書いているかわからない、ということが起こりかねない。単なる出来事の記録ならそれでも良いが、思考の記録である場合それはまずい。他者に見られる可能性がある、という前提があった方がより丁寧な文章を書ける気がする。

また、先ほども書いたが検索で引っかかって誰かが読んだりして、知識を得るにせよ娯楽にするにせよ役立ててもらう分には嬉しいという気持ちもある。それはインターネット上に存在し公開されていなければ起こり得ない。

こういったことを考慮して、wordpress.comでブログをホスティングすることにした。WordPress自体はその辺のレンタルサーバやVPSを使えば自前でもホスティングできるが、そうするとそれも含めて管理しなければならない。私は文章を書く以外の手間をできるだけブログから排したいので、ホスティングはどこかでやってもらった方がいい。

わざわざドメインを取ったのは、将来WordPressが廃れたり、何かの事情で気に食わない点が生まれて別のプラットフォームに文章を移した場合でも、ドメインのAレコードを設定しなおせば文章(少なくともその一覧)へのアクセスが担保されるからである。ここ数年でgeocitiesやniftyの@homepageやYahoo! ブログが終了して、過去の情報へのアクセスが失われている事例を目の当たりにし、非常にもったいない気分にさせられた。ドメインを取得していれば、それを避けるのはやや容易になる。

ということで、「これからはWordPressを中心に文章を書きます」というだけのことを非常に長々と書き、幾分文章を書く欲求が治まったので、しばらくは書かないかもしれない。

追記(2021-03-23)

1年ほどwordpress.comでホスティングしてみて、値段の割に機能が少ないことに不満を持ち結局はてなブログに舞い戻ってきました。前述の通りドメインを取得してあったのでブログへのアクセスは一応担保されている気がします。