The Focal Distance

若さとはこんな淋しい春なのか

今更フィルムカメラを買う - Nikon L35AD

最初に購入の経緯を長ったらしく書くので、カメラ自体や実際の写真に興味がある人は読み飛ばしてください。

小学生のとき、何かの折にカメラを買ってもらった。富士フイルムのFinePix F200EXRというデジカメである。コンデジなのだが、それが今でも「名機」と言われる代物で、よく写った。

その後もコンデジを何台か買い、大学に入ってからはミラーレス一眼のOLYMPUS PEN Liteを使ってきた。関心はあるとはいえ、写真にそこまで強くこだわりがあるわけでもないので、レンズもキットレンズと、単焦点の標準レンズしか持っていない。

そしてスマホをPixel 3aに変えてからは、それが如何せん撮れてしまうものだから、持ち歩く機会も少なくなっていた。ミラーレスとはいえ、レンズも含めればそれなりに重いし気を遣うので、スマホでこれくらい撮れるならいいやとなってしまう。

私とカメラの付き合いはここ1年くらいそんな感じだったのだが、5月くらいに黒色中国氏のブログを読んでいてフィルムがやりたいなと思うようになった。彼は最近Nikon Uを使っているという話で、それはフィルムカメラの最終盤(2001年)に発売されたエントリーモデルの一眼レフなのだが、かなり安く手に入るらしく、新しいが故に機能も充実していて撮りやすいらしい。

ほう、と思い家の近くのハードオフを探していたらボディが2,000円くらいで売られていて、悪くないじゃん! となったのだが、国からお布施が来たらレンズと一緒に買おうかなと思っていろいろ調べているうちに、気が変わってきた。

PEN Liteとレンズを持ち運ぶのも躊躇うのに、これとレンズを買ったら結局同じじゃないか、と。Nikon Uはプラスチックのパーツが多くかなり軽い方ではあるのだが、多少嵩張りはするし、もっと適当にガシガシ使えた方がいい。

途中、あまりの格好よさにNikon NewFM2やFM3Aも検討していたが、重いし高いし操作が煩雑だ。フィルムにハマれるかもわからないのにいきなり高くて面倒なカメラに手を出すこともない。そういうわけで、さらに他の機種も視野に入れた末に、L35ADというカメラにたどり着いた。

L35AD(ニコンピカイチ)とはどんなカメラか

L35AD。このあとエタノールとブロワーで綺麗にした。

Nikon L35ADは、一般にAFコンパクトカメラと呼ばれる種類のカメラである。コニカが1977年に初めてオートフォーカスのコンパクトカメラ(ジャスピンコニカ)を出して、爆発的なAFコンパクトブームが到来してから6年、1983年にニコンが初めて発売したAFコンパクトで、ピカイチという愛称がついている(より正確には、L35AFが最初で、それにクォーツデートというフィルムに日付や時間を焼き込む機能をつけたのがこのL35AD。ただし、日付は2009年までしか対応していない)。

35mm F2.8という広角で明るめのレンズは、ニッコールではないがそれらと同じくらい丁寧につくられているようで、実際ニッコール千夜一夜物語にも取り上げられている。最初、ネットに上がっていた作例を見てよく写るなと思い惹かれたのだが、これを読んでいよいよ購入することを決意した。カメラは、スマホが普及した今では特に趣味性が高いが、フィルムなど輪をかけてそうだから、カメラに物語があることは大切だ。

プラスチッキーな見た目は80年代らしいが、見た目よりは重いし大きい。でもプラスチックだと多少ぶつけても気にならないので良い。他にNikon F3などを手掛けたジウジアーロのデザインであり、赤いラインがきちんと入っている。

フォーカスだけでなく、シャッタースピードも露出も自動。フラッシュも自動で焚かれるが、フラッシュ部分が飛び出るのを指で押さえれば無効になり、スローシャッターになる。逆光用の露出補正レバーもレンズの横にあり、押すと+2.0EVになる。電池は単三2本で入手しやすい(クォーツデートはLR44)。基本的には難しいことを考えずにシャッターを押せば撮れるカメラである。

さて、このL35ADをしばらく中古カメラ店やハードオフで探していたが、見当たらず、ヤフオクで落札。ネットの情報では数千円、もしくはジャンクなら数百円でも手に入るらしいが、最近のフィルム再流行のためか、高くなっている様子。完動品で13,000円くらいだった。

それが届いたのが昨日で、早速フィルムを入れて撮り切り、現像までしたので、いくらか載せておこうと思う。使用したフィルムはすべて富士フイルムのSUPERIA PREMIUM 400。なお写真にそこまで詳しいわけではないのでつけられた感想は素人目線である。

全体的にキレがいい。飛ぶ鳥もはっきりしている。

光源があるとゴーストが盛大に出るが、出方が綺麗でフィルムだと味があるという感じなので許せる。

フラッシュの当たり方は比較的均一で好み。

ボケ方もわりと綺麗ではないだろうか。

これはフィルムの問題でもあるが、暗所もそれなりに粘っている。

一気に写真を何枚も載せてしまったが、私にはかなり好みの写りだったので、買ってよかったなあ、と思っている。28枚撮って、あからさまにピンボケしていたのは1, 2枚。この時代のAFはそこまで優秀でもないが、レンズ設計の妙もあって意外と外さない。ファインダーとレンズの視差があるので、思い通りの構図とは行かないけれどそのうち慣れるだろう。

フィルムが高騰している上に、現像も考えると金がかかって仕方ないのでなんとかせねばならないけれど、できるだけ持ち運んでいたいと思わせるカメラだった。昼間〜夕方に風景や無機物ばかり撮ったのだが、今後他のフィルムやシチュエーションも試していきたいと思っている。