The Focal Distance

若さとはこんな淋しい春なのか

Webメディアをつくるということ

完全に以下の記事に触発された形になるのですが、「Webサイトをつくってインターネットに公開する」という行為を10年以上やってきた立場から、「Webメディア」という形態について思うところを書きます。

 

lesamantsdutokyo.hatenablog.com

 

なお、この文章は特に上にリンクした記事で取り上げられているメディアへの批判として書いているわけではありません。「学生が、特に文章を中心としたWebメディアをつくる」というのなら、これくらいのことには気をつけたらどうか、という観点で一般論を話します。

インターネットなら楽で、安く済むといった発想はやめてくれ

文章を中心にしたメディアとして真っ先に思いつくのは書籍です。高校の先輩に「文鯨」という雑誌を創刊した人がいますが、おそらく、費用的にも時間的にも、大変なコストがかかっているのではないかと思っています。もちろん、そのコストは読者が情報に触れるためにかかるお金として、最終的にある程度は転嫁されるわけではありますが。

その点インターネットで文章を発信するのは、言ってしまえば費用的にはタダでもできます。今この記事を書いているはてなブログも基本的にはタダです。noteだってタダで書けます。WordPressだって wordpress.com で無料でホスティングしてくれます。でも「タダで書ける」というのは「タダでいい」というのは違うのです。

いいものをつくろうと思ったら、基本的には費用と時間(手間)をかけなければいけないのです。それでも、雑誌を1つ作ってあちこちの書店に置いてもらうのにかかるお金と手間に比べたら、わずかなものだと思います。

だから、それくらいのわずかな費用と時間はかけろ、ということを僕はまず言いたいです。ではどこに、どういう風にお金と手間をかけるのか、というところを扱っていきます。

サーバを借りる

Webメディアを(特に複数人で)運用するのなら既存のブログサービスではなくWordPressを使うのが鉄板でしょうから、サーバが要ります。学生のWebメディア程度のアクセスなら、おそらく月額1,000円程度のサーバで十分ですから、有料のサーバを借りてください。wordpress.com の有料プランでもいいとは思いますが。

「初期費用をできる限り抑えたい」というのであれば(学生でも月1,000円くらい余裕で支出できるだろとは思うものの)、GitHubのStudent Developer Packに大学のメアドで登録すれば、AWSやAzureやDigitalOceanから数十米ドル以上のクレジットがもらえますから、それで当面は賄えます。その分、それらは既存のレンタルサーバに比べて知識が要求されますので、知識がなければ大人しく既存のレンタルサーバを有料で借りましょう。

ドメインを取る

独立したメディアなら自分たちのドメインくらい取りましょう。ドメインなんかサーバよりも更に安くて、jpドメインじゃなければ年に2,000円もしないです。jpドメインでも3,000円しないと思います。

だいぶ単純化した例えになりますが、サーバが家なら、ドメインは住所です。家と住所を他人と同一にするというのは、居候させてもらうのと同じことです。また、余所からは同一の世帯に見えます。「これは自分たちが独立してやっているメディアです」というのを主張したいのであれば、ドメインとサーバくらい自分たちで用意するべきだと思います。

もちろん、例えばあるサークルが運営しているWebメディアであれば、サークルのドメインのサブドメイン(xxx.example.jp)、あるいはサブディレクトリ(example.jp/xxx/)を使用して運用するのは全く問題ありません。

しかし、適当なドメインのサブドメイン/サブディレクトリとして運用するのはできるだけ避けたほうがいいです。例えば「media.waseda.jp」というURLを見たら多くの人は「これは早稲田大学に関連するWebサイトなんだな」と思うでしょうし、サブディレクトリの場合は検索エンジンまでそう認識します(サブドメインの場合、検索エンジンからの扱いは別サイトです)。「example.jp/xxx/」と「example.jp/yyy/」は、運営主体が全く別で、内容も全然異なるものであっても、検索エンジンからすれば「同一サイトの別コンテンツ」です。「example.jp」自体の検索エンジンからの評価も、サブディレクトリの場合受け継ぎます。

とりあえずSSL

「保護された通信」という表記や、緑色の鍵マーク、あるいは「https」から始まるURLをブラウザで見たことがあると思います。このブログもそうなっているはずです。あれはHTTP over TLS(/SSL)というセキュアな通信がブラウザとWebサーバの間で行われていることを意味しています。後述するSEOにも影響するので、SSLをとりあえず採用しておくのがベターです。常時SSLで調べてください。本当はだいぶ奥が深いのでちゃんと知識があったほうがいいのですが。

従来は、HTTP over TLSを行うには多少の費用が必要だったのですが、今時は無料で提供しているサーバが多いです。サーバ選びの観点として、その機能を提供しているかどうかも鑑みるといいと思います。

SEOを意識する

SEOという言葉を知らないようなWebメディアの担当者は、単位という言葉を知らない大学生のようなもので、まずいないと思いますが、Search Engine Optimizationのことです。今時はSNSを利用した手法もだいぶ活用できるため、以前ほどではないにせよ、検索エンジンはいまだにWebメディアへの大きな流入要因となります。

書籍の例で言えば、SEOというのは書店でどこに置かれるか調整するようなものです。どうせなら平積みしてもらいたいでしょう。

文章を「できるだけ多くの人に届けたい」という目的があるのであれば、SEOは意識すべきです。もちろん、限られた層にヒットすれば良いというのであれば、SNSを利用した広告の方がいいとは思いますが、それでもSEOを疎かにしていい理由にはなりません。限られた層にSNSだけで適切にリーチできるとは限らないからです。

SEOの方法ですが、まずGoogle Search Consoleに登録でもしてください。SEOについては、書籍も死ぬほど出ていますし、インターネット上にも死ぬほど情報が転がっていますから、あとはそちらを見ていただければいいと思います。僕としてはSEOという言葉も知らないのであれば、少しはそれについて調べてみた方がお得ですよ、という思いでいます。「サブドメイン/サブディレクトリ」について結構長々と書いたのも、SEOにおいて多少の意味があるからです。

アクセス解析をする

お金かからないので、Google Analyticsを使ってアクセス解析をしてください。以上です。

アクセス解析も、ただ取るだけじゃなくてちゃんと分析できた方がいいのですが、とりあえず取るだけ取ってください。後で勉強してからでもそのデータを使って分析できます。アクセス解析を取っていないWebメディアというのは、何部売れたかわからない雑誌のようなもので、そんな雑誌ありえないですし、じゃあ結局何人が読んでるの? って話になります。それにアクセス解析をすれば流入元や流入先や人気の記事がとりあえずわかるようになります。これは運営者にとって、面白いデータであるはずです。

スピードを意識する

Webサイトを開くのに時間がかかると、大抵のユーザは戻るボタンを押して元のページに諦めてしまいます。それに関する統計は調べればあります。Webサイトを開くのに時間がかかるというのは、表紙が50kgの本みたいなものです。情報にできるだけ素早く到達できるようにしないと、誰も読む気がしません。 

文章が主体なら文章を読みやすく 

おしゃれじゃなくていいですから、文章を読みやすくしてください。

おしゃれさは色遣いやロゴで十分ですから、読みやすさを大事にしてください。文庫本だって、装幀は全部違えど、中のデザインは似通っています。そこを凝る必要はないのです。岩波なんて装幀も似通ってるし…… ストレスなく読めることが一番大事です。

これに関しては、多少デザインの知識がいるかもしれません。まず伝わるデザインでも読んでください。

まとめ

勢いで書いたので、「文章を主体にするWebメディアを運用するなら云々」と偉そうに講釈を垂れている割に悪文で、すみません。

「こんなこと当たり前だろう」と思われる方もいるかもしれませんが、水が100℃で沸騰するということを知って生まれてくる赤ちゃんはいないように、当たり前のことも最初は誰も知らないので、まだ基本的なことをよく知らない、心構えもない人に向けて書いています。

ど素人ばかりが集まってWebメディア始めちゃった/始めるつもりだ、という場合はお気軽にご相談ください。