The Focal Distance

若さとはこんな淋しい春なのか

新宿と渋谷

世の中の人間は二つに大別される。新宿が好きな人間と、渋谷が好きな人間である。新宿も渋谷も好き、というような人間は、どちらも本当には好きではないのと同じである。

僕は街を意味もなく練り歩くのが好きなのだが、それは祖母の影響である。祖母が小さい頃に僕をあちこち連れまわしてくれたおかげで、そのような気性を得ることになった。
その祖母は渋谷を好むが、僕は新宿が好きである。
もっとも、僕は多摩の田舎の育ちであり、新宿にも渋谷にも詳しいとは到底言えないのだが、それでも歩いていて感じる雰囲気の差から新宿を好む。

まず、新宿も渋谷も猥雑だという点で共通しているが、新宿は持たざる者に優しく、渋谷はそうでない感じがする。というか、新宿という街は誰でも受け入れてくれる感がある。その点渋谷は一定の基準を満たした者、おしゃれであるとか、若いとか、お金を持っているとか、そう云った人間しか受け入れてくれないと思う。テロリストのパラソルは渋谷が舞台になることはないであろう。新宿を歩いていても疎外されていると思うことはないが、渋谷は僕にとってアウェイである。これは新宿は中央線の文化圏であり、渋谷はそうでないというところによるのではないかと思っている。 

新宿や渋谷に連なる街を考えればわかりやすいかもしれない。新宿からぶらぶらと歩いていると新大久保に至り高田馬場に至る。渋谷からぶらぶらと歩いていると青山に至り表参道に至り原宿に至る。

渋谷で、歩いていて落ち着くと感じるのは、唯一鍋島松濤公園のあたりである。あの辺は閑静な高級住宅街で、やはり僕とは人種が違うのだが、それでも鍋島松濤公園がいい公園であるからだろうか。